「第三者評価をスタートさせて」
私は、いま全国保育士養成協議会(HYK)が行っている保育所を含む児童福祉施設に対する第三者評価事業の真っ只中にいます。第三者評価とは社会福祉基礎構造改革の一環として、保育所や児童養護施設などの社会福祉施設が、
@社会福祉援助を必要としている利用者に対して、よりよい援助ができるようにするため
A利用者が自分の必要としているよりよい社会福祉援助が選択できるようにするため等、利用者と援助者という二者関係を広げて、それ以外の第三者が評価を行うものであります。
措置制度下においては、行政が国民に変わって、社会福祉施設や機関に対して、公費が適正に使われ、よい仕事をしているかどうかという監査を行ってきましたが、この第三者評価は監査とは異なり、援助者が自己評価を行うことを基盤として、それに第三者の評価を重ねて、援助者自身によって、自分の仕事の反省もし、改革も行っていくように考えられているものなのです。このような評価は、産業界の品質管理の仕組みになぞらえたもので、アメリカにおいてはISOという評価機関が認められています。そして、我が国でもこの評価を受けている処も出てきています。
私は、厚生労働省の雇用均等児童家庭局において、この第三者評価を検討する委員会の座長になったり、これについて研究し実践している全国保育士養成協議会が設置した第三者評価機関の運営委員長になったことから、はじめに書いたような状況におかれています。この評価機関では、昨年度初めて、60施設余りの保育所などの評価調査を行ってきました。その結果を総括すると、現時点では極めてよかったという思いを抱いています。
その第一にあげることは、この渕野辺保育園のような平生から胸を張って仕事をしてきた良質な施設が参加して下さったことと、多くの施設から感想として、「平生は、分からなかった色々な気付きがあって、評価調査を受けてよかった」という感想が寄せられたことです。
そして第二は、評価調査者になった保育士養成校の教育研究者たちが「この評価調査が自分の教育研究に役立つ貴重な現場体験となった」という感想を述べていることです。このことは早くから社会福祉現場と教育研究者との相互的交流の必要性を感じ、その実現を主張してきた私にとっては、この第三者評価の結果から交流が実現しつつあるという実感を持ち、悦びを強く感じているのです。
我が国は、国際的に保育先進国と言われています。日本人が持つ独特なきめの細かな感性あふれる保育を行う保育士達によって、今までの年月をかけて作られてきた我が国の保育伝統を、さらに高度なものと発展させていくことを願い、かつそのことによって、親の選択眼もより高められていくような方向を目指して、この第三者評価事業を行い続けようとするものです。
いま私達の手元には評価調査が終わった保育所の関する資料が山積しています。どの保育所もそれぞれよい点や問題点があるのですが、このような情報が社会公開され、保育について国民の関心が高まり、認可保育事業の実績を知ることによって、安上がりの保育で間に合わせるという考えではなく、他を倹約してでも、よい保育にお金をかけていくようになって欲しいと思うのです。
この第三者評価事業を契機として、保育現場の人達と保育士教育に携わる人達が結束して、我が国の伝統ある高い保育水準を維持し、向上させていくように努めようではありませんか。
全国保育士養成協議会「第三者評価機関」運営委員長
白梅学園短期大学学長
日本自閉症協会会長
石井 哲夫
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